ゆとり世代、田舎へ移住する

平成生まれのゆとりど真ん中世代が移住して思ったことなどを書く日記

大家に家(明日香村)を追い出されることになりました。〜空き家バンクの問題点〜

はじめに

更新頻度は低いですが、これまで私は明日香村という田舎に移住して、色々なことをブログとして掲載してきました。しかし、明日香村での生活は、非常に残念な形で突如終了することとなりました。

何があったのか

一言でいうと、大家から「賃貸契約を更新しない(要するに出て行け)」とのお達しが一方的に来たため、出ていかざるを得なくなりました。 引っ越ししてから、ちょうど2年目でした。

なぜこの記事を書くのか

昨今、田舎で幸せそうに生活していることを特集した雑誌やネット記事(このブログもか)が取りだたされていますが、うまく生活できているのは、ほんの一部の幸運に恵まれた方です。 普通の人がいきなり田舎に引っ越しても、そう上手くいかないこともある、という話も残しておきたい…と強く感じたため、久しぶりにブログを書くことになりました。

事の経緯

時系列でまとめると以下のような感じ

  1. 11月頃、「賃貸の更新をしません」という一方的な手紙がポストに投函されていた
  2. 内容があまりに一方的すぎたため、不動産会社に電話
  3. 不動産会社から「契約書的に問題ないから引っ越しの準備してください」と言われる
  4. 我々夫婦「それはおかしくねーか?」ということで、法律とかを調べてみると、貸主は借主を一方的に退去させることはできないことを知る
  5. 不動産会社と村役場に「引越にかかる全費用を大家が負担するなら引越します」と相談
  6. 不動産会社と村役場、大家と交渉するも、案の定揉める
  7. 我々夫婦も含めて、めちゃくちゃ揉める
  8. 何とか、大家が負担することで落ち着く(本当に支払ってもらうまで油断禁物状態)

投函された手紙について

投函された手紙の実物をアップします。

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もし、みなさんの家(賃貸)に、ある日いきなりこれが投函されていたらどう思うでしょうか?
ほとんどの人が「へ?」となるのではないでしょうか?

「孫ができるから出ていってくれ」という内容も内容ですが、私が一番解せなかったのは、「なぜ直接対話する場を設けようとしなかったのか」というところです。
個人的な考えですが、普通、「〜という理由で契約更新を止めたいので、一度会って話をしたいor電話したい」って書きませんかね?契約に関する重要な事項なので、顔合わせて話をするのが人としての常識だと思います。

田舎には契約事を一方的な手紙一枚で済むと思い込んでる人もいるということです。

不動産会社との連絡

この手紙の内容が謎すぎるため、不動産会社に電話で相談してみました。
その返答が、「賃貸契約書には『貸主が借主に退去を求める場合は、2ヶ月前まで言うこと』って書いてるから、普通に応じてください」というものでした。

「え、大家の私的な都合で、いきなり引越しないといけないの??」と思った私と妻は、色々と調べてみました。
そこで知ったのが「借地借家法」です。

借地借家法

建物の賃貸借契約については,借地借家法の保護があり,契約上定められた期間が満了しても,それだけでは,借家人に立ち退いてもらうことはできません。まず,前提として,次の契約期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に,借家人に対して,契約を更新しない旨の通知をしなければなりませんし,さらに,契約を更新しないことについて,「正当事由」のあることが必要とされています。  この「正当事由」があるかないかの判断については,貸主の側の事情だけでなく,借主側の事情も当然考慮されることになり,その双方が建物の使用を必要とする事情のほか,建物の賃貸借に関する従前の経過,建物の利用状況及び建物の現況などが考慮されます。さらに,いわゆる立退料の提示があった場合には,そのことも考慮して判断されることになります。

検索すれば、解説がゴロゴロ出てきますが、要するに借地借家法とは以下のような感じです。

  • 借主を強力に保護する法
  • 借主に退去してもらうためには「借主の合意」が必要
  • 強制退去してもらうためには、貸主側に「正当事由」が必要
    • この「正当事由」が認められるハードルはめちゃくちゃ高い

今回の大家の退去させたい理由の「孫を近くに住まわせたい」なんて、まず正当事由として認めれません。(仮に裁判で争った場合、99.9%借主が勝つ)

つまり、あの意味不明な手紙に従って出ていく必要はないということです。法律上、無視して居座ってもよいわけです。

致命的に無知な田舎の不動産会社

上記借地借家法)について、再度不動産会社と電話し、説明したところ「え、あー、それについて調べてみます」という回答でした。
セカンドオピニオンというわけじゃありませんが、近くの賃貸紹介会社(アパマンショップ的なやつ)に、この一連の件について話をしたところ「それで退去させるのは無理ですね。借地借家法というのがありまして〜」と、向こうから法律の説明をしてくれました。

この不動産会社の担当者(というか田舎すぎて、オジサン一人でやってる不動産会社なのですが)、宅建を所持しているはずなのに、なぜ借地借家法を知らないのか…。この人の言う通りにしてたら、危うく自費で無駄な引越をするところでした…。

役場を巻き込んでの交渉

そもそも私たちがここに住んでいるのは、明日香村の「空き家バンク」という制度によるものです。
ということで、役場の担当者と不動産会社(オジサン)に事の経緯を説明。

こちらの要求は「退去する条件は、大家による引越費用の全負担。それが認められない場合は退去しない」です。それをもって、役場と不動産オジサンに、大家と交渉してもらうよう依頼しました。

認識が合わなすぎる人たち

案の定、交渉は難航を極めました。人生の全てを明日香村という田舎で過ごしてきた大家さんには、法律の概念は通じないようです。
しかし、何とか話がまとまったのか「支払いに応じていただけました。後は具体的な金額を大家に伝えてください」という連絡が不動産オジサンから入りました。

というわけで、急いで引越先の物件を決め、初期費用の見積書を発行してもらい、大家に渡しました。すると…

「いやいや!私は運送代(引越業者に払う金のことだと思われる)しか払わへんよ!!」とキレはじめました。

おっと、これが認識の違いというやつですか。
こちらは役場と不動産オジサンに対して、確かに「引越にかかる全費用、つまり敷金礼金とか仲介手数料も全部」と伝えたはずです。早速、そのお二人に対して、大家と話が合わない事を連絡。

「いえ、確かに我々も『諸費用全て』を払っていただくことで合意を得たのですが…」
話を続けて聞くに、どうやら「その初期費用が、大家が創造してた相場を軽く超えていたため、びっくりして急遽支払いを拒否したのではないか」という説が。確かにありそうです。

人生の全てを明日香村という田舎で過ごしてきた大家さんには、賃貸物件への引越なんて経験したことがありません。引越に総額いくらかかるかなんて、全く想像できないのです。(だからあんな軽い手紙を簡単に投函できたといえる)

交渉終結

というわけで、今度は私も含めて話合うことに。 結論からいえば、引越総費用全額の負担を渋々合意されたわけですが、何がひどいって話と関係のない嫌味や悪口が多い!

  • 話し方が偉そう
  • 旦那がいないからって強気で言ってくる(大家は未亡人)
    • →私は旦那さんが生きてくれていた方が良かったと思っています(生前、立派ですごくしっかりされた方だと聞いていたため。話がスムーズに進みそう。)
  • (なぜ手紙一枚で済ませようとしたのか?)「何回ピンポン鳴らしても出ないから!」
    • →平日の昼間に来られても仕事やっちゅーの。っていうか電話してこいよ。(携帯電話番号はお互い知ってるし、話したこともある)

…まあ書くとキリが無いですが、色々ありつつ何とか話は終息しました。
本当に支払いが済むまでは油断できませんが。

今回の出来事から感じた、田舎(空き家バンク)の問題(と改善策)

感じたことを要約すると、以下のような感じです。

  • 借主はともかく、貸主となる人は賃貸契約の知識が基本的に無いのだから、自治体がフォローするべき
    • 賃貸契約の知識が無い状態でモメると、今回のようなことになる
    • そもそも「空き家バンクに登録しませんか」と村民を勧誘しているのは自治体である
  • 何らかの対策がなされない限り、今後もこのような揉め事は継続すると思われる
    • このような揉め事が起こり続ける限り、我々のような子育て予備軍世代は永久に定住しない
    • つまり、明日香村の人口増加は厳しくなると思われる

自治体がもっとしっかりしていれば防げた事態

個人的には大家のことは大っ嫌いですが、実は一方で同情もしています。なぜでしょう。それは今回の大家の問題行動を洗い出してみればわかります。

  • 手紙一枚で退去させようとする。
  • しかも退去させる理由がめちゃくちゃ弱い。
  • 引越の費用も相場を知らないまま、支払いの約束をする(思ったより高額だったので、話を蒸し返しちゃう)

悪口とか嫌味を言ってくるのは除くと、上記にまとめることができると思います。
実はこれ、ある共通要素があります。大げさに書いちゃいましたが、何のことはありません。
貸主(大家)として最低限知っておくべき常識と知識が大家にあれば、上記の問題行動は防げたはずです。

借地借家法などの知識が少しでもあれば、安易な退去勧告はしないでしょう。引越する際には、決して安くないお金がかかることを知っていれば、退去させるために、ある程度の「立退料」が必要になってくることも分かるので、その時のために費用の準備にも取り掛かれるでしょう。

ただ、人生の全てを明日香村という田舎で過ごしてきた大家さんに、これらの知識を事前に身に着けとけよと言ったって、それは無理な話でしょう、というのが私の考えです。

物件の貸主にはある程度の知識が求められる…でもずっと田舎で生活してきた人に勉強しろといっても難しい…ではどうすればいいのか…せめて知識の面で、大家さんをフォローしてくれる人が必要だ…誰に…?

どう考えても自治体しかいませんよね。空き家バンクを運営しているんだから。

明日香村の空き家バンク

明日香村空き家等活用バンク制度について|明日香村人口誘導施策

上記は私の住んでいる明日香村の空き家バンク制度について説明してあるページです。大方、他の自治体も似たような内容だと思います。

私が問題だと思うのは以下の記述です。(「明日香村空き家・土地情報バンク制度(要綱)」より)

2 村長は、既存建物登録者及び利用登録者に対して、既存建物の利用に関する交渉、売買及び賃貸借等の契約については、直接これに関与しないものとする。 3 契約等に関する一切のトラブル等については、当事者間で解決するものとする。(交渉の申込み及び通知)

「契約等に関する一切のトラブル等については、当事者間で解決するものとする。」
…いやー、この潔すぎる他人事っぷりがまさに自治体っぽいですよねー

「上から目線」が非常に感じられる明日香村空き家バンクですが、そもそもこの空き家バンクは明日香村のために行われているはずなのです。

20年連続で人口が減少している明日香村、2017年度には消滅可能性都市に認定されています。ゆえに、人口増加は喫緊の課題なのです。
しかし、移住希望者は多いのに、景観を守るために制定された「明日香法」によって、移住者を受け入れられる物件が建てられない…。では、村内で空き家となっている物件を見つけて、移住者に充てよう…。そのための空き家バンク制度のはずなんです。

空き家バンクは、多数の移住希望者を受け入れるため、ひいては村の人口増加が目的の施策だと思っています。(というかそうじゃなかったら何なの?)

「目的」を見失っている空き家バンク制度

総合戦略策定

明日香村が、人口減少がどれだけ問題だと思っているか、というのは上記のページを見ても分かります。資料を見ても、空き家の整備や移住者の受け入れについて書かれています。

しかし、残念ながら、今の空き家バンクには「移住した人を定住させる」という目的が抜けていると言わざるを得ません。 上記の資料には定住に関することも書かれてはいるのですが、実際の空き家バンクは当事者任せです。当事者任せという事は、空き家に移住した人が定住するかどうか決めるのは「移住者と大家の相性」となってしまいます。つまり定住するかどうかは運次第ということになります。
このままでは、せっかく移住者が村に来ても、私のように大家とモメて村を出て行くケースは継続して発生します。底のないバケツのように、人口は一向に増えないでしょうね。

そこを移住者と大家の相性だけで終わらないようにフォローしていくのが自治体の役目だと私は思います。

現状、村は「人口を増やす→子育て世代に定住してもらう」という目的を、見失っていると思います。

課題を解決せず、何かと無かったにしたがる自治体

実は、私のこの一連の退去騒動の間、たまに自治体から以下のようなことを言われていました。

  • 大家さんのことも理解してあげてください
  • 配慮してください。一部譲ってください

「孫を近くに住まわせたいので退去して」と一方的に言ってきた大家の、一体何を理解しろというのでしょうか?
「孫を近くに住まわせたいので退去して」と一方的に言われた私に、一体何を配慮しろというのでしょうか?

とどのつまり、このような揉め事に関わりたくない気持ちで一杯の自治体は、どちらかが折れてくれればそれでいいので、このようなことを言ってくるのでしょう。
そんな下らないお願い事をしてくる暇があったら、こういう揉め事を防ぐための恒久対策の一つでも考えきていただきたい。

おわりに

今回起こった一連の出来事と、そこから思ったことを長々と書き連ねてみました。
ただ、私が最後に言っておきたいのは、明日香村自体は住む場所として素晴らしく良い村だということです。
自然がたくさんの環境はもちろんのこと、大家以外の近所の方はみんないい人でしたし、基本的に住んでて気持ちよかったです。大家だけ異常に生活に介入(プライバシー無視で家付近に侵入し、悪口とか嫌味を言ってくる)してきましたが。

まだ、この退去騒動は決着がついていないので、今後ブログを更新するとしたら、そのことを綴っていこうかと思っています。
(移住した田舎から追い出されることはあまりないと思うので…)

冒頭でも述べましたが、田舎に引っ越して新しい生活に移れている人は極一部で、その人達は、その人自信の能力もあるかもしれませんが、一番はただ運良く周りの人がいい人だった…ということに尽きると思います。

では、また…。